深夜13時の夜行バス

新しく店をオープンする場所の近くの停留所はここから五駅程だ。
いつも寝ていて気付かない所。今度は寝ずに頑張ってリサーチしなきゃ…と思いつつも、睡魔には勝てない。さっきの鉄火巻きで胃が満たされたからか?血糖値が上がってるのだろうか。
やはり私はいつの間にかうつらうつら、頭を揺らしていた。

車体が少し揺れてはっ!となって慌てて目を開けると、目的の店舗当たりの停留所はあと少し、と言う所だった。

はー…危なかった。
何の為にこのバスを選んだのか。

それにしても…

深夜だからか、その場所は店がオープンすると言う場にはそぐわない気がする。住宅街でもないし、大きな駅が近くにあるわけでもない。部長たちが口を揃えて言う「自然」と言う部分もただ手入れのされていない木々が生い茂っているだけにしか見えない。
それとももう少し先まで行くと拓けるのか?

そんなことを思っていると、こないだ見た――――

あの喪服の女性が、今度は前から三列目シートに腰掛け、窓の外をぼんやりと眺めていた。
最後尾からだいぶ遠いその場所で彼女がどんな顔をしているのか、どんな表情をしているのか、わからない。
ただその人は窓のサンにほっそりとした白い手を乗せて、遠くを見ているように―――見えた。

別に観察をしているつもりはないけれど

また……喪服?
それに和服だから目立つ。

こないだ彼女と同じバスに乗ったのは先週の話だ。お通夜の後のお葬式、ではないだろうし、立て続けに不幸があったのだろうか。
喪服だと思っていたら実は訪問着なのかもしれないけれど、あのシンプル過ぎる黒はどうあっても目立つ。

彼女は一体―――
何者だろう。

そして、そんなことを考えているとまたうとうとと睡魔が襲ってきた。
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