深夜13時の夜行バス
塩原の名前を見つけたとき、迷いもなくそのメモリをタップしていた。
『おう、無事に帰ったか~?』
塩原はワンコールで出た。
「……ごめん、こんな夜中に。寝てた?」
『寝てないから電話出れたんだろ』塩原が電話の向こうで少し笑った。
その声にほっとした。
『何かあった?』
塩原の口調はすぐに変わった。私の声が沈んでいたことに気付いたのかもしれない。
「う、ううん!何でもない……」
言いかけて、私はすぐに考えを訂正することにした。
私は深夜バスで起こった一連の出来事、喪服を着た女性が毎回どこかで乗車して、どこかで降車していくこと、デジタル時計は単なる故障だったけれど、夢で見た出来事。真珠が転がってきたことは勿論、
夢で葵さんを見たこと。
早口で伝えたからかな、家路に着く前に全てを話し終えていた。
塩原は『所詮夢だろ?寝ぼけてたんじゃねぇの?』と笑い飛ばすことなく
『何だそれ、気味が悪いな』と真剣に頷いてくれた。
『不安だったら今からそっち行こうか』とまで言ってくれたけど、それは流石に悪い気がした。
そもそも私たち彼氏彼女の関係じゃないし。
「ありがと、気持ちだけは受け取っておく。とりあえず今日は疲れたから寝るわ。明日のプレゼンも控えてるし」
『そーだったな、とうとう明日かぁ。まぁ前川が居れば大丈夫だろうけど、ホントあんまり無理するなよ。何かあったら絶対電話しろよ!』
塩原は―――優しい。
こんな風に私を想ってくれる人、塩原しかいないよ。
そんな塩原が私は
好――――………
ちょっと待って!
私、塩原が好きなの?
今まで塩原のアタックに何となく気持ちが傾いていた程度だったのに…
でもハッキリと確信した。
私は―――
塩原が好きなんだ。