あの噂に隠された運命に涙する
草木が太陽に向かって葉を広げるように、みんなで未来に手を伸ばしていくために歩く道。
それは足早に駆けていくものではなくて、大事に踏みしめていくものに思えた。

未来は分からない。

だからこそ、このひとときを、この一瞬を。
あたしは大切に胸へと抱く。
現実世界と『スムージーラリア』の世界の二重生活。
初めての出来事の数々。
そして、初めての気持ちを知った。
そう考えると何だか、不思議な気分になる。
今はただ、もっと、高見橋くんたちと一緒に、『スムージーラリア』の世界で過ごしたい。
もっとたくさん、高見橋くんたちのことが知りたいと思ったんだ。

「これから何度、季節が巡っても、この世界は誰かの希望のかけ橋になるから」

決意を固めると、心臓がぎゅっと締めつけられる。
そして――。

「スペア総合病院。この病院で亡くなりそうになった時、『スペアに会いたい』と願うと、自分と瓜二つ、つまり、そっくりな姿をした分身、『スペア』が現れて、願いを叶えてくれる」

あの噂は今日もまた、誰かの命を救っているのだろう。
死にかけたあたしに、生きる希望をくれたように。
きっと、誰かの生きがいになっている。
涙ににじんだ視界の先で、噴水の水しぶきがまぶしく輝いていた。
夏の到来を告げる水しぶきは、まるで夜空をきらめく流れ星のようで。

現実世界と『スムージーラリア』の世界。
二つの世界をつなぐ奇跡を結びつける。

その時、あたしはふと、思ったんだ。
もしも、流れる星に祈りを込めるだけで叶うとしたら。
あと、もう一つだけ、叶えてほしいことがある。

『芽衣様……』

思考をさえぎるように、スポナビさんがメッセージを表示させた。

『大恋愛モード、入りました! 噴水様と大接近。噴水様が、芽衣様のことを運命の人だと告げております。これから公園デートをしますか?』
「お願い!! これ以上、変な攻略対象を出さないでーー!!」

梅雨の終わりと夏の始まり。
そのはざまで、あたしの絶叫がのどからほとばしったんだ。

【完】
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