【シナリオ】あなたの隣で、音になる
第15話(最終話):まだ大人になりきれない私と、
◆3月・卒業式当日/大学キャンパス
桜が咲き始めた構内。汐音が真っ白なブラウスに袴姿で、仲間たちと写真を撮っている。
そこへ、少し離れた場所から奏多がスーツ姿で現れる。
千晴「あ、汐音!来てるよ、真木先輩」
汐音「……っ!」
奏多と目が合うと、ふたりの間の距離がゆっくりと縮まっていく。
周囲の視線はもう、気にならない。
奏多(やわらかく微笑んで)「袴、似合ってる」
汐音(照れたように)「……ありがとうございます」
◆その夜・奏多の部屋
ふたりきりで過ごす最後の“大学生としての夜”。
夕食のあと、奏多が部屋の照明を少しだけ落として、PC画面を開く。
奏多「見せたいものがあって」
映し出されたのは、“汐音の演奏を使った曲”のMV。
タイトルは《one tone》――“君がいて、初めて一つの音になる”。
汐音「……これ、私の演奏……?」
奏多(うなずいて)「ずっと残したかったんだ。
お前の音、俺の全部にして」
汐音(小さく息をのんで)「……ずるいです」
奏多(少し笑って)「それ、最後まで聞いてから言って」
そう言って、立ち上がり、引き出しから小さな箱を取り出す。
中には――楽譜が折りたたまれて入っていた。
奏多「これ、俺たちふたりの“初めての曲”のスコア。
お前が最初に弾いてくれた、あの時のまんま」
汐音、目を見開き、そっと指先で紙をなぞる。
奏多(真剣に)「5年後、10年後。もしかしたら変わっていくかもしれない。でも俺は、ずっと“お前と組んでいたい”って、今思ってる」
汐音(涙ぐみながら)「……わたしも。夢も、音も、恋も、あなたと作っていきたいです」
◆春の並木道
卒業式の数日後、春の柔らかな日差しの中。
私服姿で並んで歩くふたりの手は、自然につながれている。
汐音(心の声)
(先輩に出会って、私は“音”だけじゃなく、
自分の声も、心も、信じてみたいって思えた)
奏多「新生活、不安?」
汐音「……ちょっと。でも、ワクワクもしてます」
奏多「じゃあ、一緒に始めようか。“大人の恋”ってやつ」
汐音(微笑んで)「――はい。まだ大人になりきれない私と、あなたがくれた未来へ」
【完】


