すべての花へそして君へ①
ご主人の行方を知りませぬか
ヒナタくんの言った通り、そりゃもう会場へ入った途端揉みくちゃにされました。髪の毛はボサボサになるわ、服も引きちぎられそうになるわ……。ご期待通り、いつものメンツは投げ飛ばしてあげましたけど。(※シントとアキラくんとの小話は投げたあとの話)
それから緩~い感じでパーティーが始まり、いろんな人と話しているとあっという間に小一時間は経っていた。……けれど。
(あれ。ヒナタくんがいない……)
シントから聞いたハプニングによると、一度ここへ帰ってきてたはずなんだけど。そういえば、みんなに出迎えてもらった時姿が見当たらなかったかも知れない。流石に会場広いから、ハッキリとそうだとは言えないけど。
(もうっ。一人でどこに行ったの)
あれだけ一緒に、ごめんなさいとありがとうしようねって言ったのに。
(このパーティーは、わたしだけじゃなくてヒナタくんももちろん、関わってくれたみんながいないと、意味ないんだからね……?)
ふうと小さく息をつき、会場を見渡す。各々パーティーを楽しんでいるようだった。いつものメンバーも、忙しい中しばらくの間ここで話を聞いてくれた親御さんたちも。
わたしの思いつきなパーティーだったけど、みんなの顔には笑顔の花が咲いていた。よくよくお礼を言っておかないと。
(ちょっと廊下にでも出てみようか……)
楽しそうなみんなを横目に、ヒナタくん捜索隊隊長のあおいは、こっそり会場を抜け出すことにした。
(お。あれは……)
会場がある廊下の突き当たり。そこにいたのは、窓から差し込む鈍い月明かりに照らされた麗しの美男子。
そんなことを言いたくなるぐらい眩しかった。とにかく、眩しかった。イケメン怖し。お月さんよりも輝いていらっしゃるって……。
(その色気をわたしに分けてくれっ……)
いや、いいんです。別に。わたしに色気なんて、誰も求めていないので。
考えてて悲しくなったので、さっさとお兄ちゃんにヒントをもらうか、一緒に捜索隊へ入ってもらうことにしよう。
「つーばさくんっ」
「……、おう。どうしたんだよ」
一瞬の間があったあと、振り向いたいつも通りのツバサくんに駆け寄っていく。
「いやね? 大したことじゃないんだけど……」
君のね? 困った弟くんを探しているのだよ。一緒に皆さんのところに行こうと思ってるのに全然見当たらないから、このまま見つからなかったら一人で行っちゃうぞ、と思っている次第でして……。
「俺が知るわけないだろ? ちゃんとリードつけとけよ」
ヒナタくんがペットになった▼
いや、お兄ちゃんや。あなた自分の弟にそんな扱いでいいんかい。
「何言ってるんだよ」
「え?」
「あいつ、チカ以上のツンデレ猫だろうが」
「…………」
猫にリードはつけません▼
え。つけないよね? 猫ちゃんは自由奔放な生き物でしょう? そりゃつける猫ちゃんもいるだろうけど。
「でも、確かに言われてみれば……」
あの人、とっても自由な人だと思うわ。絶対犬じゃないよね。全然忠実じゃないし。でもそもそも、どっちかって言ったらやっぱり飼い主……。
「わたしはどっちかと言えば犬な自信があるけれど……」
「どんな自信だよ……」
「ご主人は一体どこへ行ったんだ!?」
「だから、俺が知るかって……」