すべての花へそして君へ①
糖尿病をとるか彼女をとるか
「杜真。お疲れ」
「ってことは、次はアキ?」
「そういうことらしい」
向こうもいいタイミングだと思って、続けてそのまま、俺がいこうと思ったけど。
(……泣いたのか、杜真)
杜真の目元を見たが、それは口には出さないでおいた。
「ほんと。葵ちゃんすっげーわ」
「ん? ……というと?」
「先に言っとくけど、俺なんにも言ってないからな」
「……何のことだ?」
訝しげに眉を顰めていると。
「ピッチングコーチのフォローに回ってくるようにお願いされたから、行ってくるわ」
擦れ違いざま、「お手上げだ~」と。小さく笑ってそのコーチの下へと向かっていった。一瞬、なんのことかわからなかったから、その情報を処理するまでに、数秒固まったけど……。
「……はは。流石。葵に隠し事なんてできないな」
まあ葵にそんなこと、するつもりはさらさら無いけどな。
小さくそう漏らしながら、大人しく待っている葵のところへ、俺は足を進めた。
「葵おかえり。ご所望のデザートをお持ちしました」
「……ただいまアキラくん。ていうかご所望してないし。取り過ぎだから。教室減らそうにも減らせないじゃん」
これが取り過ぎか。俺的には、葵と関われる機会が減るのは嫌だから、教室は減らして欲しくないんだが。……まあ。気を付けよう。そのうち。
「お次はアキラくんですかー。ヒナタくんならそうするかなって思ってたけど」
そこまでわかって、ふふんっと笑う彼女に感嘆が出てくる。端から見たら、彼女のこういうところが異常だと言われる所以なのかも知れない。……でも、それでも俺は、それが彼女の魅力の一部なのだと、ずっと前から思っていた。
「葵は、いつわかったんだ?」
小さく断りを入れ、杜真が座っていた席へと座る。
「ほとんど勘だよ? ただ、ご飯食べてる時、絶対左手は机の下から出さなかったから、何してるのかなって」
「それで、杜真が来て、日向が席を立ったから?」
「もしかしたら、そうなのかなって思っただけ」