すべての花へそして君へ②

 いきなり拭いてくれていた手が激しくなり、体があっちへフラフラこっちへフラフラ……。は、激しすぎて、本当にわたし、この年で髪の毛の心配をしないといけなくなるよっ?!


「……よし。まあ、この辺でいいかな」


 は、激しい荒波だったぜい……。
 というか拭くのは最初だけで、もうそっちのけでわたしの頭掴んで振り回してたでしょあなた。そのせいで、ロビーまで帰ってきていたはずなのに、いつの間にやら結構移動させられている。あ、頭がグワングワンする……。


「それで? なんで砂糖水なんか被ったの? Mなの? 知ってるけど」

「ぅえっ!?」

「え? だってあおいMじゃんドMじゃん」

「た、確かにそれは否定はしないけれど……ヒナタくん! 実はわたし、結構弄って遊ぶのも好――」

「まあそれはいいとして」

「せめて最後まで言わせてよう……」


 ていうかここはどこだ? きょろきょろしていると、「二、三歩歩いただけだよ」……だって。
 絶対嘘だ。わたし、かなりあなたに振り回されましたもの。だって、フロントにあった年季の入った大きな大木のカウンターもなければ、立派な盆栽もないし待合所もない。
 ほら、怒んないから。あおいさんに、正直に話してみなさい。


「……ちょっと、脇道入っただけ」

「おお! そうなんだ! さっすが常連さんっ」


 なぜかため息つかれたけど。でも、手元はやさしく髪のベタベタを拭ってくれている。


「それで? どうしてこうなったの?」

「すぐお風呂行くよ~」

「だから、どうしてこうなったのかって聞いてるんだって」

「ん? ……ふっふっふっ。 実はだね! ラムネがね! 爆発したの!」

「え」

「いやあ。短時間で色んなことが経験できて、わたしゃ幸せ者だ、うん」

「……やっぱドMでしょ」

「知りたがりさんと言ってくれっ!」

「知りたがりのドMでしょ」

「その通りっ!」

「そこは、肯定するところじゃないからね……」


 それから、ある程度拭けたのか。呆れた彼は、今度は毛先をキュッキュと絞り始める。


「……それで? 他にラムネ被ったとこは?」

「おっ! そうそう聞いて! ミラクルが起こったのっ!!」

「はいはい。どこ被ったのー」

「あのねあのね! あの、ビー玉落とすヤツあるでしょ? あれね! リングと玉押しって言うんだけどね?」

「はいはい。取り敢えずは顔だろうねー」

「ぶふっ……」


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