すべての花へそして君へ②
「……じゃあ今日も一緒に寝る?」
はてさて。さっきまでの可愛らしかった彼はどこへやら~。とっても意地悪な笑みを浮かべている彼からは、朝っぱらから色気が駄々漏れていた。
「……ねえ。どうするの? あおい」
「んん……」
頬を耳を首筋を、すーっと撫でられ小さく震えた体をぎゅっと捩るように抱き締める。
そんな様子に楽しそうに笑いながら、「ごめんごめん。さすがに朝っぱらからはしないよ」そう言って今度はつんつん頬を突きながら少し子どもっぽくなる。
「それとも、その気になった?」
かと思ったらまた、ころころと雰囲気を変えられて……た、対応できないんですけどっ。
まあでも、「いや、ほんとにオレは寝るつもりなかったんだけど、あおいが抱きついてきて離れなかったんだよ」と、自分のまさかの行動に、驚きすぎて目ん玉飛び出るかと思ったけどね。
「だから、はじめはオレもぶっ飛ばされたとき、あおいにされたのかと思ったんだよね」
「そ、そうだったんだ……」
そこら辺の記憶はなくって、寝ぼけていたことがもったいないなと思いつつ、そんなことをしたのかと、少し恥ずかしくなった。
「まあ、今度こそほんとにそろそろみんなも起きてくるだろし。うるさくなる前に帰ろ」
「そうだね――! わっとっと」
そう言ってぐちゃぐちゃになった布団を整えはじめた彼を手伝おうとしたら、またふらっときた。今度はそのまま布団の上でスライディング。
上手に座れた! ちょっと両手を挙げてポーズもとってみる。じゃじゃーん!
「大丈夫? やっぱり、頭打ったところが悪かったんじゃ……」
「ちょっとー。突っ込み入れてよー」
「おかしい頭はいつでも心配してる」
「それは生まれ変わらないと駄目だね」
「……そんなに酷いんだ。かわいそうに……」
「本気で心配しないで!?」
まあ、まだちょっと頭痛はするかな……? でも酷くないし、すぐよくなるよ!
大丈夫だよと、言うわたしの頭を「無理はしないように」と、心配そうに覗き込みながら撫でてくれた。その手に彼の表情に、自然と頬が緩む。
「へへ。……おはよ! ヒナタくんっ」
そういえばまだ言ってなかったねと言うと、彼はなぜか一瞬驚いたように目を瞠る。そして小さく笑ったあと、そっと顔を寄せてほんの少しだけ、触れた。
「……おはよう。あおい」
なんだかとっても嬉しそうな笑顔に、こちらまで嬉しくなった。……いつかは、おやすみも言い合えたらいいな。
「……もう一回」
「……え」
「だ、ダメ……?」
「……朝から煽んないでよ。止まんなくなる」
そんなことを思うくらいには。