すべての花へそして君へ②

 それから取り敢えず落ち着いて話を聞くと。


「今の今まで完全に頭の中から消えてたんだけど、そういえばお昼に、今日の夜また会おう……的なことを、シズルさんが言っていたなーっと思って」


 それを思い出したこいつは、慌てて連絡したんだとか。


「……ねえ。オレに相談してくれてもよかったんじゃない」

「い、いやもう遅かったし、断るなら断るで早くしないとって思ったんだってば……!」

「だから、断るなら断るでオレに一言相談を」

「まあそれで、葵ちゃんから連絡がきてね?」


 話が進まないからって、間に割って入ってくるし。
 だから、断るならオレも付いてきたし。あんた、こいつにナンパされたこと忘れたんですか? もうちょっと危機感というものを……いい加減持ってくれないと、オレの身が保たないんだけど。
 ていうか連絡……って、あれ破ったじゃん。あんな一瞬で覚えたっていうのかよ。今まですっかり頭から消えてたくせにい……。


「それで会った瞬間に玉砕。もうちょっと期待持たせてくれてもいいのにねー」

「期待を、……持たせてしまってはいけないと思ったので」

「……ほんと。優しい子だね。葵ちゃん」

「馴れ馴れしく名前呼ばないでくれますか」

「ひっ、ひなたくん……!」


 ペイッ! と口を塞ぎにかかってくる手を、さらっと避けてその手を掴む。


「オレはあんたにも怒ってるんだからね」

「すっ、すみません」

「何こんな夜遅くに一人で出歩いてるのバカ」

「す、すみません……」

「それは俺も同感」

「そう思うならちゃんと注意してくださいよ。大人でしょ、それでも」

「それでもって酷いなあ。……でも」


「気になってる子から《今から会えませんか?》なんて言われたら、断れるわけないでしょう?」って。そりゃそうかも知れませんけど、ダメなものはダメって言えよ大人なんだから。


「それに、何かあっても俺が守ってあげるしね」

「こいつに一番襲われる可能性が高いからオレは今あんたを連呼してバカって言うんだからねわかったかバカバカバカバカ」

「ご、ごめんってば……!」


 まあでも、何もなかったんならほんとよかった。


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