すべての花へそして君へ②
「――とうっ」
しようとしたんだけど、その頭は……というかシントの体は、いきなり飛んできた足によって吹っ飛んでいった。
「……ヤバい。俺やっぱりカメラマンに向いてるかも」
どうやらバッチリ撮っちゃったらしい彼だけは、おもちゃを与えられた子どもみたいに喜んでいる。
「いったあ~……。ちょっと日向くん?! いきなり跳び蹴りは酷くない!?」
「あ。シントさんだったんですね。寄生虫かなんかかと思いましたゴメンナサイ」
「どういうこと!?」
「ヒナタくん、謝る気ないよね全然……」
すぐさま帰ってきたシントは、あまりにも理不尽な仕打ちを受けたからか、それとも返答に腹が立ったのか。今にも喧嘩をおっぱじめるような勢いで、ヒナタくんの首元を掴み上げた。
「いい度胸じゃん」
「そちらこそ」
って、ちょっとちょっと。なんでそんなに険悪ムード!?
やめなさいやめなさい。今日はお祭りなんだぞ!?
「まあまあ葵ちゃん。ここは若い二人に任せてようよ」
「なんでトーマさんそんなに冷静……」
「ん? 『もし日向くんが俺に手出してきたら、コテンパンにやっつけるからそれも撮ってね? それを葵に見せて、考え直すよう説得する!』って」
「いやいや、考え直さないから……」
「『ついでに杜真くんも視野に入れるようそれとなーく言っておいてあげる』って!」
「そっちが目的か」
「『だから、葵のパジャマ姿の写真あげるから、撮影係しっかり頼んだよ!!』って~!」
「そこに行き着くわけね……」
「ねえ。……どういうこと」
「……」
ま、そんな結果だろうと思ったと肩を落としていると、いつの間にか二人がもっと険悪な雰囲気に。慌てて止めに入り、その手をペイッと払う。
「……けほっ」
「ヒナタくん大丈夫……?」
「信人さん、さすがに遣り過ぎですよ」
「……ま、君に任せるって決めたからね。俺ができるのはここまで」
……? 何のこと?
トーマさんと二人して首を傾げるけれど。
「あとは自分で何とかするんだよ」
ただシントはやさしい表情で笑うだけだった。
「……あの、シント」
「あーごめん。充電の途中だったね。さあおいで葵! 懐の大きな俺が、お前を抱きしめてあげよう!」
むっぎゅーッ! と軋みそうなほど抱きついてきた彼に再び足が飛んできたのは、もはや言うまでもない。