すべての花へそして君へ②
「わっ! どうしたんだよ九条! またカマ戻りか!?」
「いや、せっかくだしこのままでいっかなって」
「その恰好で普通に出されると違和感が……」
「今頃オネエ言葉で話したって気持ち悪いだろ?」
「「ははっ! 確かに!」」
そんな話をしてるとは到底思っていないであろうお兄ちゃんは、障害物競走の列に並びながらAクラスBクラスの人たちと楽しげに話している。
「オレは、九条家は全員見返りを求めて、挙げ句相手の首を絞めることばかり考えているものだと……」
「いやいや、それヒナタくんだけだから」
「ちょっと。聞こえてるよ」
「だから、同じ血が通っているとは到底思えなくて……」だからしみじみ、あんなことを言ってしまったと。完全ヒナタくんの存在を無視して真剣にそう思ってしまったんだと。そういうことだね?
「……うむ。そう思うとあんまり似てないね」
「あんたまで酷いね」
じーっと見つめながら真顔で一言。そして、全然酷いなんて思っていなさそうな声に、ふっと笑いが漏れる。
「でもね? すごいよく似てるんだよ」
そしてそっと、彼の片耳にもついている紫色のピアスに、つんと触れる。
「なっ」
「え? 具体的にはどの辺がですか……?」
「……(なにすんのさ)」
急に触れた手に、レンくんに見えないところでわたしを睨むように見てくる。
きっとくすぐったかったんだろうけど。恥ずかしかったんだろうけど。それさえも……ちょっと可愛いけど。
「頑固なとことか、我慢強いとことか、やさしいとことか、甘えん坊なとことか、それから……すごくすごく、家族思いなとことか。ふとしたときに、やっぱり兄弟なんだなって思うときがあるよ」
と、言うわたしにレンくんは「……そうですか?」と半信半疑。そんなレンくんやわたしの視線から逃げるように、机に突っ伏した照れ屋さん。うん。やっぱりちょっと可愛い。
「……あ。でも確かに似てるなって思った部分もありました。九条さんさっき――」
『弟なんて、選べないもんな』
「的なこと言ってたんで」
「……本気で女にしてやろうかなあいつ」
「ヒナタくん、どうどう……」
ドンッ――!
大きな音を立てて上がった煙火に拍手喝采。……しまった。可愛い彼を落ち着かせるのに精一杯で、ツバサくんの勇姿が拝めなかった。トーマさんに今度、写真を見せてもらおう。