すべての花へそして君へ②
それから結局、船が着くまでわたしの足は占領されていました。……痺れた。
「サラさん。今日はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。それから、……いろいろありがとうございました」
無事に船場へと到着したわたしたちは今、サラさんに駅まで車で送ってもらっている。
「迷惑を掛けたのはアオイちゃんじゃなくて九条くんだから。あなたが気にすることじゃないわ?」
「いえ、わたしも勝手に判断してしまいましたし……。報・連・相はきちんとしないといけませんでした」
「ふふ。じゃあ、これからはきちんと怠らないようにね? まあ、“待て”を覚えさせておいて、損はないかもよ?」
「おお。“待て”ですね! わかりました!」
「九条。すごいこと言われてるぞ」
「ご迷惑をお掛けしてごめんなさーい」
「九条くん、心がこもってない……」
「彼の誠心誠意がこれですからあ」
「日向。飴いるか?」
そんなよくわからない会話をしていたら、あっという間に駅に到着。辺りはもうだいぶ暗くなっていて、街灯もぽつりぽつりと点き始めている。
「……サラさん。本当にありがとうございました」
「こちらこそありがとう。……実はね、アオイちゃん」
話を聞くと、彼女の捜索は、もう少し経っても手掛かりがなければ打ち切りになるところだったらしい。だから、本当にありがとうと。ようやく次の段階に移れると、サラさんは真っ直ぐな笑顔をわたしにくれた。
「また彼女のことで、詳しいことがわかったら連絡するわね」
「はい! ありがとうございます! お疲れ様でした!」
「うん。お疲れ様。それじゃあ男子諸君? 無事に旅館までアオイちゃんを送り届けるんだぞ? それじゃあ……。……またね。アオイちゃんっ」
運転席に座っているサラさんは、窓から手を伸ばしてわたしの頭を撫でたあと、また船場の方へと戻っていった。……こういうことをさらっとできるかっこよさを、うちの男子勢にも分けてあげて欲しい。
「着いたら起こしてね」
電車に乗り込むや否や、そして空いた椅子に座るや否や。彼はそう言ってもたれ掛かってきて、瞳を閉じてしまった。
(そんなに寝る時間はないと思うんだけど……)
疲れてしまったのかな? と。まあ、心配をかけてしまったしなと。そう思って、「わかった」とだけ言っておいた。
「葵はやさしいな」
「違うよアキラくん。これはね、甘いと言うんだよ」
「葵も甘いなら……一回くらい食べてみたいな」
「ええ!?」
「……アキくんダメ」
さすがにまだ寝ていなかったらしい。怒る彼に、アキラくんは「はは。冗談だ」と笑う。