エンドロールは救いの詩を
俺が診察を終えて待合室へ行くとナナがいた。
ナナは真っ赤にした頬を膨らませている。
「えーっと...」
「リクさん、どこか怪我されたんですか?」
「あー、はい。ちょっと手首捻っちゃって...。でも治してもらえたんで大丈夫です」
「よかったですね」
言葉自体は優しいが、表情と言い方は不貞腐れていた。
「なんか...怒ってます?」
「なんでさっき助けてくれなかったんですか」
「なんでと言われましても...」
「私スゴく怖かったのに!」
「急にそんなコト言われても...」
「あんなに必死に助けを求めたのに...」
ナナの不機嫌は治りそうになかった。
俺は仕方ないと思い、ナナの瞳を真っ直ぐ見る。
「分かりました」
「え?」
「次、ナナさんが助けてって言った時は俺が絶対助けます」
俺の言葉にナナは瞳を煌めかせる。
「本当ですか!?」
「はい。信じてください」
「絶対絶対絶対ですよ?」
「はい。絶対絶対絶対です」
「ふふっ。それなら安心です!それじゃあまた!」
そう言ってナナは笑顔で手を振って診察室の中へ入っていく。
「早まったかなぁ...」
俺は小さくそう呟く。
流れでしてしまった約束。
それでもナナの笑顔を見れたコトが、俺に約束をして良かったと思わせていた。
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