影の妻、愛に咲く~明治の花嫁は、姉の代わりだったはずなのに~
声を震わせながらも、しっかりと告げた。

「姉・梨子の願いで、この縁談を引き受けました。」

お父様は手元の書類を凝視し、名前の不一致に気づいていた様子だった。

そして、ようやく口を開く。

「梨子さんの……願いだと?」

「はい。姉は、結婚に乗り気ではありませんでした。けれど――」

私は唇を噛んだ。

「姉は誠一郎さんのことを“好い人だ”と仰っていました。けれど、その気持ちに応えられないと。」

お母様が目を見開く。

「じゃあ……梨子さんは、誠一郎との結婚を――承諾していなかったの?」

「……はい。でも家の為に、姉は私に“お願い”したのです。“代わりに嫁いでくれないか”と。」

「そんな……」

お母様は手で口元を覆い、わなわなと震え始めた。

「ここには……あなたは、妾腹だって……。誠一郎は“本家の娘”を娶ったんじゃないの⁉」

私の心臓が凍りついた。

――やっぱり、私の出生が壁になる。
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