奪う
1
早く殺したい。
机を挟んで対面する女の話を、彼は欠伸を噛み殺しながら聞き流していた。顔だけは、ちゃんと聞いている風を装って真剣そのものである。
最期に私の話を聞いてもらってもいいですか、から始まった女の自分語りは長かった。生きる希望を見失い、死ぬことを決意するまでの話に興味などない彼には退屈な時間だと言う他ない。
このような時間を過ごすことは初めてではないが、何度経験しても眠気に誘われてしまう。
さっさと殺させてくれればいいのに、誰も彼も最期に長々と話したがるのはなぜなのか。全てを話してすっきりさせてから殺されたいだけなのか。彼にとってはいい迷惑である。次に誰かを殺す時は、話したがっても許可しない方がストレスを感じなくて済むかもしれない。
不満を抱きながらも顔には出さず、彼は望み通り気持ちよく話をさせるために、適度に相槌を打ち、適度に共感した。
「まさか私が騙されていたなんて、思ってもみませんでした」
女が俯く。長い髪の毛が顔を隠す。垂れ落ちたその髪の毛は、見ただけで分かるほどにパサパサしていた。身なりに気を遣うことができないほどに生きる気力を失くしていることが窺えた。
女は三十代だと聞いている。その年齢の割には白髪が多い。全体的に窶れているようにも見える。非常に強い精神的なダメージを食らってしまったようだ。殺してほしいと本気で誰かに頼むほどに。
彼は依然として女の話を集中して聞くことなく、目だけで室内を見回した。
ここは女の自宅だ。整理整頓をする気にもならないのか、どこに目を向けても雑然としていた。汚くてもどうでもいいのだろう。今日、死ぬのだから。
彼と女はSNSで知り合った。もっと正確に言えば、彼の方から死にたがっている女にコンタクトを取ったのだ。ちょうどいいタイミングでちょうどいいところにいた獲物だった。
机を挟んで対面する女の話を、彼は欠伸を噛み殺しながら聞き流していた。顔だけは、ちゃんと聞いている風を装って真剣そのものである。
最期に私の話を聞いてもらってもいいですか、から始まった女の自分語りは長かった。生きる希望を見失い、死ぬことを決意するまでの話に興味などない彼には退屈な時間だと言う他ない。
このような時間を過ごすことは初めてではないが、何度経験しても眠気に誘われてしまう。
さっさと殺させてくれればいいのに、誰も彼も最期に長々と話したがるのはなぜなのか。全てを話してすっきりさせてから殺されたいだけなのか。彼にとってはいい迷惑である。次に誰かを殺す時は、話したがっても許可しない方がストレスを感じなくて済むかもしれない。
不満を抱きながらも顔には出さず、彼は望み通り気持ちよく話をさせるために、適度に相槌を打ち、適度に共感した。
「まさか私が騙されていたなんて、思ってもみませんでした」
女が俯く。長い髪の毛が顔を隠す。垂れ落ちたその髪の毛は、見ただけで分かるほどにパサパサしていた。身なりに気を遣うことができないほどに生きる気力を失くしていることが窺えた。
女は三十代だと聞いている。その年齢の割には白髪が多い。全体的に窶れているようにも見える。非常に強い精神的なダメージを食らってしまったようだ。殺してほしいと本気で誰かに頼むほどに。
彼は依然として女の話を集中して聞くことなく、目だけで室内を見回した。
ここは女の自宅だ。整理整頓をする気にもならないのか、どこに目を向けても雑然としていた。汚くてもどうでもいいのだろう。今日、死ぬのだから。
彼と女はSNSで知り合った。もっと正確に言えば、彼の方から死にたがっている女にコンタクトを取ったのだ。ちょうどいいタイミングでちょうどいいところにいた獲物だった。