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時計の針が傾いていく。オレンジ色の光が一人しかいない科学部の活動場である理科室へと差し込む。
(もうこんな時間か……)
四ノ宮恭介(しのみやきょうすけ)は暗い顔でテーブルに並んだビーカーや実験器具などを見つめる。時計の針の動く音が痛いほど耳に響く。ここには恭介以外誰もいない。それなのに、恭介の前には一人の女子生徒の姿が浮かんだ。
『恭介くん!この結晶すごく綺麗じゃない?』
艶やかな長い黒髪、眼鏡の奥にある輝いた瞳、学校指定のセーターの上に羽織った白衣。その姿を思い浮かべるだけで恭介の胸は苦しくなる。
「先輩……」
一ノ瀬未来(いちのせみく)のことを何度も恭介は考える。目の前がぼやけた。数秒後、恭介の頰を涙が伝う。
「先輩……」
もう未来はここにはいない。未来は一週間前、交通事故で亡くなったからだ。
恭介と未来の出会いは中学の入学式が終わった後だった。小学校とは違う教室、初めての制服、見慣れないクラスメートたちの顔、初めてのことだらけで恭介は緊張してしまった。
(もうこんな時間か……)
四ノ宮恭介(しのみやきょうすけ)は暗い顔でテーブルに並んだビーカーや実験器具などを見つめる。時計の針の動く音が痛いほど耳に響く。ここには恭介以外誰もいない。それなのに、恭介の前には一人の女子生徒の姿が浮かんだ。
『恭介くん!この結晶すごく綺麗じゃない?』
艶やかな長い黒髪、眼鏡の奥にある輝いた瞳、学校指定のセーターの上に羽織った白衣。その姿を思い浮かべるだけで恭介の胸は苦しくなる。
「先輩……」
一ノ瀬未来(いちのせみく)のことを何度も恭介は考える。目の前がぼやけた。数秒後、恭介の頰を涙が伝う。
「先輩……」
もう未来はここにはいない。未来は一週間前、交通事故で亡くなったからだ。
恭介と未来の出会いは中学の入学式が終わった後だった。小学校とは違う教室、初めての制服、見慣れないクラスメートたちの顔、初めてのことだらけで恭介は緊張してしまった。
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