逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。
2.歪んだ関係の構築

1.レイラの婚約者





sideリリー



突然だが、私が代わりを務めるレイラ・アルトワ様には婚約者がいる。

この国の王家とも並ぶ力を持つと言われている三大貴族の一つ、シャロン公爵家の長男、ウィリアム・シャロン様だ。
ウィリアム様の歳は私やレイラ様と同じ12歳で、2人は6歳の頃から交流があり、つい2年前、10歳の時に婚約したらしい。

そんなレイラ様の幼馴染ともいえる存在、ウィリアム様に私は今日、初めて会いに行く。

アルトワ伯爵家に来て、早2ヶ月。
徐々にレイラ様としての生活にも慣れてきた私を見て、伯爵様は言った。
「そろそろ婚約者であるウィリアム様にもお会いできる頃合いだろう」と。

ウィリアム様が私やアルトワ伯爵家の事情をどれだけ知っているのかは知らない。
けれど、レイラ様ではない、レイラ様に瓜二つの私を初めて見るのだ。
あまりいい反応は得られないだろう。
最悪、最初の頃のセオドアのように拒絶反応を見せるかもしれない。

アルトワ伯爵家にとって、シャロン公爵家との婚約はとても重要なものだと、ここ1週間何度も何度もセオドアから聞かされてきた。
シャロン公爵家のウィリアム様はその王子様のような美しい容姿と何をやらせても完璧な器量、さらには性格の良さからこの国中の誰もが婚約したいと願うお方。
そんなお方とレイラ様が婚約関係にあるのはレイラ様自身がウィリアム様に、またシャロン公爵家に気に入られ、認められているからだった。

私の対応のせいで婚約が破棄されたとなると、とんでもない大損害だ。その大損害をきっかけに男爵家が見放される可能性だってあるし、もちろん私が追い出される可能性だってある。

そうならない為にも気を引き締めなくてはならない。



「ダメだ。そのドレスは姉さんには似合わない。この白いものにしろ」



メイドたちに囲まれている私にセオドアが冷めた表情で一枚のドレスを突き出す。
セオドアの手にある白いドレスは今私が着ているものとは違い、とても質素で地味なものだった。

ここはレイラ様の部屋。
私は今、レイラ様の部屋でメイドたちの手を借りて、ウィリアム様に会いに行く為に身支度をしていた。
そしてそこに何故か突然セオドアが現れた。





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