逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。

4.俺だけの完璧な婚約者 sideウィリアム





sideウィリアム


この国の王家とも並ぶ力を持つ、三大貴族のうちの一つ、シャロン公爵家の跡継ぎは完璧でなければならない。
何もかも全て。婚約者に至るまで、だ。

俺の完璧の一つだった完璧な婚約者のレイラが半年前、バカンスに行く途中で、馬車で事故に遭い、おそらく死んだ。
行方不明扱いになってはいるが、こんなにも月日が経っているので、生きている方がおかしいだろう。

この国の同世代の中で一番完璧だった彼女はもうこの世にはいないのだ。

シャロン家がアルトワ家との婚約を望んだ理由はひとえにレイラの存在が全てだった。
完璧な跡継ぎには完璧な婚約者を。ただそれだけだった。

アルトワ家のレイラがいないのなら婚約は解消…そう思われたが、アルトワ家は何事もなかったかのように行方不明だった〝レイラ〟を改めてこちらに紹介してきた。

半年前に事故に遭い、記憶を失ったレイラ。
それが彼女だった。

初めて彼女に会った時、レイラとは瓜二つだが、どこか雰囲気の違う少女だと思った。
レイラが完璧で近寄りがたい美しい高嶺の花のような存在なら、彼女は美しいながらも親しみがあり、愛さずにはいられない存在という印象だ。

彼女の状況は彼女に会う前から父上に聞かされていた。

彼女はレイラのニセモノだ。
レイラを見つけられなかったアルトワ家はついにレイラ自身を探し出すことを諦めて、レイラによく似た没落寸前の男爵令嬢を養子にし、レイラとして扱うことにしたのだ。
そんなレイラに対して、父上の反応はあまりにも父上らしかった。

ウィリアム・シャロンの婚約者がこの国一完璧なご令嬢であるのなら、それが例えニセモノのレイラ・アルトワでも構わない。だが、もし、今のレイラ・アルトワが以前のレイラ・アルトワのように完璧なご令嬢でなければ、婚約は破棄する、と。

父上の言葉を思い出しながらも、何となく自身の部屋の窓から外を見ると、ちょうどここシャロン公爵邸から帰ろうとしている彼女の姿が目に入った。




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