逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。
3.6年後の3人

1.完璧なご令嬢




sideリリー



アルトワ伯爵家のレイラ様となり、6年の月日が流れ、私ももう18歳になった。

私、リリーは変わらずレイラ様として生きており、15歳からはレイラ様が通うはずだった王立学院にもレイラ様として通っている。
そして私は今、そんな学院内の多目的広場に貼り出されている、あるものをたくさんの生徒たちに紛れて、じっと見つめていた。

そのあるものとは夏休み明けの実力テストの順位である。

完璧なご令嬢、レイラ・アルトワ様は、文字通りこの国一完璧なご令嬢と言われ、見た目の美しさ以外にも教養まであるお方だった。
そんなレイラ様が約6年前、事故に遭い、数年もの間、社交界から姿を消した。
だが、しかし学院に入学すると共に社交界へ舞い戻ってきたレイラ様は以前と変わらず、優秀で完璧なご令嬢だったのだ。
…私の血の滲むような努力のおかげで。

最初は貴族の教養も勉学も何もかも全く触れてこなかったので、ちんぷんかんぷんだった私だが、学院入学までの3年間、家庭教師の先生といつも隣にいたセオドアのおかげで何とか理解できるようになった。
そこからさらに努力を重ね、理解するだけでは終わらず、応用まで手を出し、全てを深く理解できるようにした。
その努力の甲斐もあり、学院での成績もずっと良好だ。

今の私は貴族の教養のきの字もない、没落寸前の男爵家の娘だったとは誰も信じられないほど完璧な存在になっていた。

貼り出されている実力テストの結果も良好でほっと胸を撫で下ろす。

私の実力テストの順位は2位だった。
学院に入学して以来ずっと変わらない順位だ。



「さすが俺の婚約者だね。今回もすごいね」



私の後ろから聞き慣れた柔らかい声が私に声をかける。
声の方へと視線を向けると、そこにはレイラ様の婚約者である、ウィリアム・シャロン様がいた。

ウィリアム様が現れたことによって、周りにいた女生徒たちが黄色い声をあげる。



「ウィ、ウィリアム様よ!」

「な、なんてお美しいの…」

「まるで絵画から出てきた王子様のようだわ…っ」



きゃあきゃあと小さく騒ぐ女生徒たちの熱い眼差しを受けてもなお、ウィリアム様はいつも通りだ。





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