君の未来に、ぼくがいたこと。
【第6章:命のタイムリミット】

ラスト撮影

夏の暑さがまだ残る朝。
陽翔はいつものように笑顔を作り、カメラの前に立った。

「今日で最後の撮影だ。みんな、頑張ろう!」
陽翔の声は震えていたけれど、誰も気づかなかった。

結月が小声で凛空に囁く。
「陽翔、すごく疲れてる……でも、頑張ってる。」

凛空もうなずいた。
「俺たちが支えるしかない。絶対に最後までやりきろう。」



撮影が進む中、陽翔は何度も胸を押さえ、息を整えた。
「大丈夫、ちょっと休むだけだから……」
そう言いながらも、体は限界に近づいていた。

「監督、少し休んだほうが……」
結月が心配そうに声をかける。

陽翔は笑顔を返した。
「ありがとう。でも、今は絶対に止まれないんだ。」



だが、その時――

「……あっ……」

陽翔の視界が急にぼやけ、ふらつきが激しくなる。

「陽翔!? 大丈夫か!」
凛空がとっさに腕を掴む。

「……ごめん……」
陽翔は小さな声で呟き、崩れ落ちた。

「陽翔!!」
結月が駆け寄り、泣きそうな声で叫んだ。



スタッフも慌てて駆けつけ、撮影は中断。
救急車が呼ばれ、陽翔はすぐさま病院へと運ばれた。

結月は手を握りしめ、凛空と肩を寄せ合う。

「……こんな終わり、いやだ。まだ、終わってほしくない。」

凛空も涙をこらえながら言った。
「絶対に、陽翔を救う。絶対に!」

サイレンの音が遠ざかっていく中、三人の想いが交錯した。
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