売られた少女はクールな闇医者に愛される
2人は丘の上にあるベンチに座る。


「あれが夏の大三角形ですかね?」

雪菜が指で三角を空になぞりながら話す。

「そうだな。てっことはあっちが西か!」

冬弥が言う。


「夏の大三角形が見えたら西なんですか?」

「今の季節はそうだな。」

冬弥が空を眺めながら言う。


「冬弥さんってなんで冬弥さんなんですか?名前の由来です。冬生まれだからですか?」

「突然どうした?」

冬弥が不思議そうにする。


「聞きたくなったんです。私、雪菜って名前の通り冬生まれなので。冬弥さんもそうなのかなって。」

雪菜が興味深そうに言う。


「この名前は親父さんが冬に俺と出会ったからって言って、つけてくれた。本当の誕生日も知らないんだよな。だから親父さんと出会った日を誕生日にして祝ってもらってる。
親父さんに出会う前はなんて呼ばれてたのか覚えてないなー。まあ別に記憶もないし、興味もないけど。
物心ついた時にはもう今の屋敷にいたから。」

雪菜は少し驚いたような表情をするが、

「冬弥さんの名前素敵です。クールでかっこよくて、でも冬の中にある温かさももってる人だから。ピッタリです。さすが組長さんですね。」


雪菜はニコニコと話す。

「そんなふうに言われたのは初めてだわ。ありがとな!」

雪菜の言葉に冬弥の表情がふわっと柔らかくなる。そして雪菜の頭を撫でた。


「雪菜はなんで雪菜なの?」


「私は初雪が降った日に産まれたからです。だから雪菜になりました。名前にちなんで、昔から名前の隣に雪の結晶のマークをよく書いてました。」

「いい名前だな。
でも雪だるまじゃなくて雪の結晶なんだ笑。」

冬弥がクスッと笑って話す。


「初めはお母さんも雪だるま書いてたみたいなんです。でも雪の結晶の方がかっこいいとか子供心に思ったみたいで、雪の結晶の方が喜ぶからって書いたみたいです。私も昔からの癖で雪の結晶をよく書いちゃいます笑」


「へぇーそうなんだ。可愛いエピソードだな!
なんかこの先、雪の結晶みたら、おまえのこと思い出しそうだわ。」

冬弥がつぶやく。
< 78 / 132 >

この作品をシェア

pagetop