売られた少女はクールな闇医者に愛される
橋本組の動きが活発になると予想されたため、俺と竜也が雪菜のボディーガードをすることになった。

竜也はおしゃべりだ。
雪菜とも楽しそうに話していた。

俺はなぜかそれがあまり気に入らなかった。
雪菜が笑顔になれる環境を作ることが大切。分かってはいたが、他の男と仲良くしているのは面白くない。
今思えば完全に嫉妬だった。


竜也に取調べのことを聞かれた時、今までの俺なら、殴ってやった、あんなやつ脅して当然、裏をついたら真実を話したと言っただろう。

だけど雪菜の目を見ると少し怖そうにしていた。


俺は自己紹介の時も本当の仕事のことは話さなかった。その時はただ怖がらせてはいけないと思ったからあえて言わなかったのだが、今は本当の仕事のことは知られたくなかった。

雪菜の前では極道の自分を見せたくなかった。隠したって仕方がないことだと分かっているけど、本当の姿では雪菜のそばにいられない気がした。
彼女の怖がる存在になりたくなかった。


彼女に極道の仕事をしていることがばれて、俺を怖いかと聞けば、極道の仕事は怖いけど、俺の事は怖くないと言った。
むしろ安心すると言われて、俺は胸が温かくなるのがわかった。
彼女が自分をみても怖がらないことがこんなにも嬉しいなんて思ってもおらず、そう話す彼女がかわいくて、柄にもなく照れた。

俺の中で雪菜の存在がどんどん大きくなっていった。
< 99 / 132 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop