先生と拒否柴系女子【本編】
「そっか⋯⋯やっぱり、ペットロスって辛いものなんだね」
「ああ。しかも、当時はまだ一度も死別というものを経験してなくて、それが初めてだったから、尚更かも」
「どんな子だったの?」
「よくぞ聞いてくれました。太郎って名前の真っ白な柴犬で⋯⋯」
 太郎とはまた渋い名前だ。
「前から思ってたんだけど、千沢は太郎に似てるんだよ」
「は⋯⋯?」
 まさか、犬に似ていると言われるとは。
「太郎は、凛々しい顔立ちをしてたんだけど、柴犬の特徴なのか、面倒くさがりで頑固な性格だった。そんなところが千沢と同じだなって」
「先生⋯⋯また私を馬鹿にしてるね」
「違うよ。他の生徒たちと違って、千沢は群れないし、媚びない。それに、女子たちが黒目をデカくするコンタクトや、つけまつげで無理やり目を大きく見せようとしてるのに対して、鶴田一郎の美人画みたいな洗練された雰囲気と、切れ長の目に吸い寄せられた」
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