恋とバグは仕様です。 ~営業スマイルで喧嘩して、恋に落ちるまで~



02|エラーの先にあるもの

 その夜、凛の部屋。

 夜風がカーテンを揺らす静かな時間。
 二人は並んで座り、ただ黙っていた。

 手は、そっと重なっている。
 何も言わなくても、あたたかかった。

「凛」

「ん?」

「……俺、他のプロジェクトに呼ばれてる」

「……そうなんだ」

「地方の支社。半年間」

 ぴたり、と空気が止まる。

 静かに、凛は問い返す。

「──行くの?」

「迷ってる。でも、断る理由がない」

 そこには責める言葉も、涙もなかった。
 ただただ、正直な気持ちのやり取りがあった。

「……行ってきなよ。やりたいなら」

「いいのか?」

「寂しいけど、……嫌じゃない。だって、繋がってるから」

 遥人の目が、ふっと和らぐ。

「俺、すぐ帰ってくる。……そのとき、もっと自信持って、ちゃんとそばにいたい」

「じゃあ、待ってる。仕事も頑張るから」

 手を強く握り合う。

 恋人同士であることに、キスも約束もいらなかった。
 ただ、“信じている”という心が、絆の証だった。


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