あなたの子ですが、内緒で育てます
 私が妻でもなんでもない相手だという、その事実さえ、ルドヴィク様は忘れてしまったのだろうか。

 ――もしかして、私が復縁を望んでいると思われた?

 ここで、しっかり言っておこう。

「復縁はお断りです」

 ルドヴィク様は酸欠した魚のように、口をパクパクさせていた。
 そんなルドヴィク様を無視して、ジュストは容赦なく扉を閉めた。

「どうやら、セレーネ様を王妃にし、国王の地位に居座ろうと考えていたようですね」
「これで、私の気持ちが通じたでしょう」
「どうでしょうか。恥を知らないようですから、まだ続くのでは?」

 そんなわけないわ、と笑ったけれど、ジュストの意見が正しかった。
 ルドヴィク様のほうが、ある意味、デルフィーナよりも厄介な相手となったのである。
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