あなたの子ですが、内緒で育てます
「それはどうかしら? はい、どうぞ。頼りになる実家からの手紙よ」
 
 手紙をすんなり渡してくれた。
 それを読むべきではなかった。
 読んでしまえば、私は誰からも救われないことを知ってしまうから。

『無能な娘よ』
『お前のせいで侯爵家は終わりだ』
『二度と帰ってくるな』

 ――そんな内容の文章が続き、吐き気と目眩がした。

「セレーネ様!」
 
 ジュストが心配して、駆け寄った。
 それを面白くなさそうに、デルフィーナが眺める。

「ジュスト。あなた、わたくしが陛下の護衛騎士に推薦してあげたのに、それを断ったそうね」
「自分は、ザカリア王弟殿下にお仕えする騎士ですので」

 ザカリア王弟殿下の名前を聞き、デルフィーナが不快な表情を見せた。
 王国でもっとも繁栄している領地を所有するザカリア王弟殿下。
 領地からザカリア様が出てくることはなく、『ひきこもり殿下』などと、呼ばれている。

「王宮とザカリア様の連絡役として、王宮に部屋をいただく身。セレーネ様の護衛が人手不足で、足りていないと判断し、手を貸しているだけです。なにか問題でもございましたか?」
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