かりそめ婚は突然に 〜摩天楼Love Story〜
「何にしましょうか」
メニューは一つなので顔を寄せてのぞきこむことになる。
ずらりと牡蠣の名前が並んでいるけれど、残念ながらさっぱりだ。

「KUMAMOTOって、日本の牡蠣かしら?」

「んー、産地はアメリカになってるから、元は日本の品種だったんじゃないですかね。面白そうだからそれ頼んでみましょうか。あと今日のおすすめを聞いてみますよ」

昼なのでアルコールはやめてスパークリングウォーターを頼む。
生牡蠣を二個ずつ何種類か選び、名物だというクラムチャウダーも注文した。
ひとまず水で乾杯する。水はタダじゃないんだよな、と思いながら。

よかったですよ、とグラスから口を離して彼がつぶやく。
なにがというわたしの視線に答えるように「桜帆さんかわいくて」と続ける。
「義理でも魅力に欠ける女性との食事はごめんなので」

兄嫁に言う台詞ではないだろう。イギリスではあり?…いや、そんなわけはない。

「…わたしの写真は見たことあったんじゃないですか?」

結婚式の写真をお袋が送ってきたと、つまらなそうに言う。
「あんな白塗りに角隠しじゃ、みんな同じように写りますよね。真っ白く飛んでました」

「あれは白無垢に合わせた化粧ですからね。粗を隠す意味もあるのかもしれませんけど」
不覚にも笑いそうになる。あんなに顔と首を白く塗るのは後にも先にもないだろう。
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