おねぇ男子は好きなあの娘に手作りお菓子をあげて告白したい!



「今日こそ、花嶋さんに私の手作りお菓子を渡してそして……告白するんだからぁ!」

 早朝。まだ誰も来ていない教室。あたしは自身の席に座り、昨夜作ったクッキーを壊れないように胸に抱き、拳を握った。

 普段ねぼすけのあたしが早起きして教室に一番乗りした理由……それは、好きな女子に、花嶋咲(はなしま ひらら)さんに告白するためよぉ!

 環境委員の花嶋さんはクラスの誰よりも朝早く来て、花壇のお花のお世話をしているそうなの。
 人の少ない早朝なら……と思って、あたし頑張って早起きして来たのよ。


 ──ガラリ。


「あれ?荻原(おぎわら)君早いね。おはよう」

 席に座って花嶋さんが来るのを待っていると、花嶋さんが来た……

 キタアアアーー!!

 花嶋さんが来たと同時に、あたしの心臓が胸の内を暴れだした。

「あっ、あのね花嶋さん!」

 声を裏返しながら、あたしはガタンと勢いよく席を立った。

「ん?どうしたの荻原君」

 こてんと首をかしげながら言う花嶋さん。アアンもおかわいいっ!……じゃなくて。

「あの……こっこのお菓子……」

 震えながら花嶋さんにお菓子を渡そうとした時。

「お~お前ら早いな。お早う」

 通りすがりの担任があたしたちに声をかけてきた。

「花嶋は花の世話か?毎日偉いな」
「いえ」
「お?いつも遅刻ギリギリの荻原も早いな。花嶋の手伝いか?」
「あ、え……はい」
「お前らほんと偉いな!よっしゃ、俺もお前らと一緒に花の世話するか」
「え?でも先生忙しいんじゃ……」

 邪魔しないでよ!と内心で思う。

「まだ朝早いし、大丈夫!」

 そう先生は言って、ガハハと豪快に笑った。

 



「はぁ~……結局告白できなかったわね」

 放課後。自分の席で突っ伏しながら呟く。

 結局、朝は先生が邪魔で告白ができず。
 その後も、タイミングを見て告白しようとしたけど……なかなか1人になることがなくて。

「こうなったら放課後……と思ったけど、花嶋さんどっか行っちゃったし」

 ぐうっ、とお腹がなった。

「このクッキー食べちゃお……」

 ラッピングを開け、クッキーをサクリ。

「はぁ。花嶋さんにあげたかったわぁ……」

 そう1人で呟いていると。

「美味しそうだね」

 声がしてその方を見ると、そこには花嶋さんが立ってた。

「荻原君の手作り?」
「え!う、うん」
「1枚もらっていい?」
「も、もちろんよ」

 花嶋さんはそう言って、クッキーを1枚食べた。

「おいしー!荻原君私のお嫁さんにならない?」
「やだもー!からかわないでよ……え?」
「本気……って言ったら?」

 そう言った花嶋さんの頬が、夕焼け色に染まっていた。





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