隠れスー女の恋の行方
第4章: それぞれの好き、すれ違う気持ち
「……でさ、赤木さん、最近なんか雰囲気変わったよね」
昼休み、給湯室でコーヒーを注いでいた澪に、同期の友梨がふいに話しかけてきた。
「……えっ? 変わった……?」
「うん。なんていうか、“柔らかくなった”っていうか。……あー、これはあれかー、“好きな人できた顔”だな」
「えええっ!? ち、ちがっ……!」
「図星?」
「ちが……く、ないとは言えないかも……」
顔が熱くなるのを感じながら、澪はそっとカップを両手で抱えた。
(……神崎さんのこと、まだ誰にも言ってないのに)
神崎と観に行った両国でのデートのあと。
ふたりは「付き合ってください」といったはっきりした言葉は交わしていないけれど、もうお互いの“特別な人”になったと、澪は感じていた。