君は幻。

風に解けた記憶

気づけば、あの子はいなかった。

まるで、最初から幻だったように。


最初は、ただ儚い雰囲気を纏っている女の子だな。と思った。
遠くから見ているだけで、思わず息を呑んでしまうほど心を奪われた。
初対面なのに、胸の奥が静かに波打っていた。
遥燈(はるひ) 「こんな子が目の前にいるなんて…」
どこを見つめているのかは分からないが、何かを見ている彼女がとても麗しく見えた。
千捺(ちなつ) 「どうか、なさいましたか?」
「えっ、いや…すみません、貴女がとても美しく、魅入ってしまいました。」
「ふふっ、ありがとうございます。」
初対面の俺に穏やかな表情を見せてくれた。
ああ、これが《恋》なんだ。
恋とは、こんなにも静かに始まるものなのか。

千捺。俺は君のことを一生、死んでも忘れません。
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