響け、希望と愛の鐘

デモの準備

優美が事務所に入ると、ボランティアの奈穂と、上司の安達に出迎えられた。

 奈穂がプラカードを見せ、笑う。

 「優美さん、無事でよかった!

 全国デモのデザイン、これでどうですか?」

ピンクの横断幕に、「私たちは一人じゃない」と書かれている。

 優美は頷き、奈穂の手を握る。

 「ありがとう。

 みんなの声、絶対届けるよ」

 ハギくんがデスクに座り、ノートパソコンを開く。

「先輩、全国デモ、300人以上集まる予定です。

 許可申請、全部通りました。

 佐藤は逮捕されたけど、自由空間の会、まだ何か企んでるみたいです。

 今度は、デモに直接乗り込むつもりかもしれません。

俺、警備と証拠集め、ガッツリやりますから!」

優華がソファに寝転び、笑う。

「姉ちゃん。
 次のデモ、私も応援する。

少し魔力のサポートがあるといえど、
 能力を使うとやたら疲労感があってね。

 使えるうちに、使っておく!」

優美は2人を見ながら、胸の温かさを感じた。

 監禁の恐怖、佐藤のナイフ、トラウマのフラッシュバック――

 それらを乗り越えた今、彼女は一人ではないと実感していた。

 スマホには、賛同者のメッセージが届く。

『優美さん、負けないで!』

『次のデモ、絶対行く!』

 佐藤のハッキングは失敗に終わり、#WomenReclaimSafetyは再びトレンド入りしていた。

優美はスピーチ原稿を手に取り、呟いた。

 「怖くても、止まれない。

 私たちの声、届けなきゃ」

「優美先輩、めっちゃカッコいいっす。

 俺、必要なら優美先輩を近くで支えたいとは思ってるんですよ」

優華がニヤリと笑う。

 「矢萩さん?
 姉ちゃん、口説く気?

 まだ靡かないと思うけど」

「ちょ、優華ちゃん!

 今のはちょっと、傷付くって!」

事務所に笑い声が響き、

 優美の心に、希望の光が灯った。

 だが、自由空間の会の次の計画が、彼女を待ち受けていることを、誰もが感じていた。

 
< 52 / 104 >

この作品をシェア

pagetop