姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

気付けば夕陽はほぼ沈みかけていて、辺りが暗くなってきた。

「まっ!いい経験できてよかったじゃない、感謝しなさいアンタ達!」

「なんでお前が偉そうにしてんだよ……。」

次々と花火を点火して立ち上る煙を海風が攫っていく。

思い出の1ページだ、なんて柄にもないことを思ったりして。

今度はどの花火をしようかと花火セットを眺めて吟味していると、隣にいた近江涼介がこっちを見ていることに気づいた。

朱色の空が海の中に溶けていく。
一瞬静かになって、波の音が一際大きく聞こえた気がした。

「今年はできてよかったな、夏休み。」

――去年のことを覚えていたのか。

真顔でそんなことを言うから、可笑しくなって声を上げて笑ってしまう。

「あはっ……でもまだまだあるからね!夏休み!」

くしゃりと無邪気に楽しそうに笑う。

それを見て近江涼介は、意外そうに目を丸くしてこう思う。

(そんな顔もできるようになったのか。)
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