姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
怒りなのか羞恥心なのかわからないままカーッと体が熱くなる。
その時にはもう広瀬真はドアノブに手をかけている。
ガチャンと金具が鳴る音がした。
ドアを引く動きをはた、と止め、睨むような目線と共にぶっきらぼうに口を開く。
「姫、“また明日”な!」
ヘタクソな優しさが、“何も変わらねーよ”ってメッセージを力強く伝播させる。
「……!!」
不器用な緩急に面食らっている間に、広瀬真は校舎の中に入っていってしまった。
急に静かになった屋上で、私は1人ポツンと立ち尽くす。
(この間の榛名聖もそうだし、今回もだし、
最近助けてもらってばっかりだ。)
自分で自分に苛立って、スカートの裾を握りしめる。
大嫌いなはずの、弱みを見せる女のムーブをしているようで情けない。
ここ最近の失態は、過去や自分とちゃんと向き合わないで、ずっと下を向いていたせいだ。
(こんなの“私”はらしくない。
ちゃんと前を向かなくちゃ。)
今までのモヤモヤを全て吹っ切るように、自分の両頬を思い切り叩く。
冷え切った頬にその痛みは刺す様に染みて、ジーンと後を引くのに頭の中がクリアになった。
「よし!やってやろうじゃないの!!」
空に向かって両拳を突き上げ思い切り伸びをする。
――強くなろう、前を向こう。
恋心を認めたくらいで大切な日常が壊れてしまうわけがないって、2人が教えてくれたから。
そう意気込んで、澄んだ冬の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。