ぶたさん
料理人が興奮しながら褒めちぎります。 周りの人も口々にぶたさんを褒め称え、同時に溢れ出るヨダレを飲み込みます。 うさぎさんが遠くで何かを話していますが、ぶたさんには全く聞こえません。 ふと耳に手をやると、赤黒い液体がこびりつきました。 いつの間にか、耳を切り落とされていたようです。
ぶたさんは何も聞こえない空間の中で、色々な事を考えていました。 うさぎさんはとても幸せそうです。 きっとぶたさんのお肉を食べ、うさぎさんは試合に勝つ事でしょう。 それはぶたさんが望んでいた結果のはずです。 夢が叶う瞬間のはずです。 結末は何も変わっていないはずなのです。
あのまま毎日を過ごしていたら、きっとぶたさんは最低の人生を過ごし、そして結局は誰かに食べられていたのでしょう。 そんな日々から抜け出し、今はたくさんの人が自分を認め、慕ってくれています。 絶対に見れなかった景色が、眼前に広がっているのです。 夢見た世界以上に、ぶたさんが得たものは大きかったはずです。 そしてそれを誰より実感していたのは、他ならぬぶたさん本人だったはずです。
なのになんでしょう、この引っかかりは。 ぶたさんは自分が何を求めていたのか、何が欲しかったのか、訳が分からなくなってしまいました。 だからぶたさんは、思考を原点に戻す事にしました。
(原点は、うさぎさんのサポート。 うさぎさんの為に、自分が出来る事。 それが達成出来たのに、何を悲しむ必要があるんだろう)
ぶたさんは笑いました。 心の底から、笑ってやりました。 うさぎさんの幸せを想い、そして自らの成功を刻み付けるように、高らかに笑ってやりました。
現実にかえってみれば、ぶたさんと同じくらい満面に笑みを浮かべている料理人の姿が見えます。 が、途端に見えなくなってしまいました。 どうやら目の玉をくりぬかれたようです。 急に笑い声も出なくなりました。 どうやら喉元を切り裂かれたようです。 頭に手をやると、粘りつくなにかがこぼれています。 どうやら頭を潰されたようです。
そこで、ぶたさんは終わってしまいました。
ぶたさんは何も聞こえない空間の中で、色々な事を考えていました。 うさぎさんはとても幸せそうです。 きっとぶたさんのお肉を食べ、うさぎさんは試合に勝つ事でしょう。 それはぶたさんが望んでいた結果のはずです。 夢が叶う瞬間のはずです。 結末は何も変わっていないはずなのです。
あのまま毎日を過ごしていたら、きっとぶたさんは最低の人生を過ごし、そして結局は誰かに食べられていたのでしょう。 そんな日々から抜け出し、今はたくさんの人が自分を認め、慕ってくれています。 絶対に見れなかった景色が、眼前に広がっているのです。 夢見た世界以上に、ぶたさんが得たものは大きかったはずです。 そしてそれを誰より実感していたのは、他ならぬぶたさん本人だったはずです。
なのになんでしょう、この引っかかりは。 ぶたさんは自分が何を求めていたのか、何が欲しかったのか、訳が分からなくなってしまいました。 だからぶたさんは、思考を原点に戻す事にしました。
(原点は、うさぎさんのサポート。 うさぎさんの為に、自分が出来る事。 それが達成出来たのに、何を悲しむ必要があるんだろう)
ぶたさんは笑いました。 心の底から、笑ってやりました。 うさぎさんの幸せを想い、そして自らの成功を刻み付けるように、高らかに笑ってやりました。
現実にかえってみれば、ぶたさんと同じくらい満面に笑みを浮かべている料理人の姿が見えます。 が、途端に見えなくなってしまいました。 どうやら目の玉をくりぬかれたようです。 急に笑い声も出なくなりました。 どうやら喉元を切り裂かれたようです。 頭に手をやると、粘りつくなにかがこぼれています。 どうやら頭を潰されたようです。
そこで、ぶたさんは終わってしまいました。