漂う花は、還り咲く
「……お前、これ、まぐれじゃないだろ?」


凛月が低い声で問う。

私はうつむいたまま、小さく息を吐いた。

「私……6歳までの記憶がないの。施設にいたんだけど、その前のこと、全部思い出せない。

だから、もしかしたら……昔、何か……こういうことをしてたのかもしれないって……」


一瞬、静まり返った空気を破ったのは、やんちゃな笑い声だった。


「へえ〜! じゃあ試してみようよ!」


晴が軽く跳ねるように私に向かって突っ込んでくる。

「うわっ!?」

思わず身を引いちゃったけど、次の瞬間、晴の腕をするりと取って、回しながら足を引っ掛け、ソファに向かって柔らかく転がした。

「いった!? なにこれ!?」

「え、ちょ……ごめん! 体が勝手に……!」

私はびっくりして、自分の両手を見つめた。

その様子に、結翔が低く笑う。

「……やっぱり、面白ぇわ。お前」

「なあ六花。よかったらさ、本格的に“海月”に入らね?」

伊織が初めて、心からの興味をにじませる声で言った。

「お前の居場所、案外ここかもよ」

私は少しだけ黙って、でもすぐに、いつもの笑顔を浮かべた。

「うん。……ちょっとだけ、楽しそうかもって思った」


そう言って笑った私を見て、幹部たちはそれぞれ意味ありげに表情をゆるめた。


けれど、さっき転がされた晴はというと――。

「……くっそー……!」

ソファの上でぺたんと座り込んだまま、唇を尖らせてこっちを睨んでいた。
< 12 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop