漂う花は、還り咲く

「……六花、ビリ近くない?」

「え、マジで筋肉痛なんだ……」

「ていうか六花って、こんな顔もするんだな」

その言葉が、遠くで聞こえた。



……いい。どう思われたっていい。

昨日の手合わせを思い出す。

あの空気。あの視線。

そして、帰り道。

後ろから感じた結翔の背中のあたたかさ。


止まりたくなかった。

誰かの期待とか、評価とか、そういうのじゃなくて――
私自身が、今、負けたくなかった。

あと一周。足が止まりそうになる。

でも止まらない。止まらせない。


呼吸は荒くて、汗で視界がにじんで、喉が焼ける。

それでも、一歩一歩を前に運んだ。


「……やばい、これ本気でがんばってる六花じゃん」

「なんか、意外と……熱いんだな」


そんな声が、後ろから聞こえる。

私は、ただ前だけを見ていた。

――あと半周

脚はガクガク。腹筋はちょっと揺れるだけでズキンと痛い。

それでも、あと少し。あと少しだけ。

最後の直線、白線が見えてきた。


……いける

歯を食いしばって、最後の一歩を踏み出す。

ゴールした瞬間、視界がふらついた。
< 34 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop