漂う花は、還り咲く

「んな怒るなよ。凛月たちなら、もうすぐシフト終わると思うよ。
じゃ、彼女さんも楽しんでね。」


「ちげーって!」


威嚇する晴をよそに、先輩は私へ軽く手を振る。


私も小さく会釈をして——

そのまま、先輩に飛びつきそうな勢いの晴の腕を引き、別棟へ入った。



「さっきのって先輩?」

見失った直樹と魁を探しながら、隣の晴に聞く。


「んー、まぁそんな感じ。凛月たちと同じクラスで、たまに顔合わせるんだよ。」


「へぇ。凛月たち、もうすぐシフト終わるみたいだね。会えたらいいなー」


「会えるだろ。時間なくても、みんな六花に会いに抜けてくるんじゃね?」


「はは、そうだったら嬉しいな」



——そういえば。

こうして晴と二人で話すの、初めてかもしれない。


いつもは誰かしらいるし、二人きりでもゲームしてるし。

せっかくだし、ずっと気になってたこと、聞いてみようかな。


「ねぇ晴、あのさ」

「ん?」

「晴って——」


「お二人さん、デート中ですかぁ?」


突然、耳元で声がして振り向く。

そこには、見慣れた顔ぶりが揃っていた。


「伊織!みんなも!」

「おつかれー。……つーかデートじゃねぇし!」


晴が伊織に飛びつき、それをひらりと避けられる。


いつものたまり場と変わらない光景に、自然と頬が緩んだ。


「おい」

凛月の不機嫌そうな一言で、二人の動きがぴたりと止まる。


「凛月、朝から忙しすぎて機嫌悪いんだよ」

「うわ、おつかれさん」


結翔と小声でやり取りする。


「つーか、なんでここ分かったんだよ」

「先に直樹と魁に会って、“この辺にいるはず”って」


「その二人は?」

「“俺たちのことは気にせず回ってください”だって。晴に伝言」

「そっか」


千隼の言葉に、晴はそれ以上何も聞かなかった。



「私たち、お化け屋敷向かってたの!みんなで行こうよ!」


「ここの、結構本格的だよ?大丈夫?」


「うん、行ってみたい!」


——文化祭クオリティでしょ?

なんて思ってた、さっきまでの自分を殴りたい。



「ぎゃああああああ!!」

「ちょ、六花!あっぶな」

突如現れた血まみれの口裂け女に驚いて、伊織の背中に飛びつく。



「うわ!?」

「っ、ギブギブ!!」

足を掴まれて、反射的に晴の首にしがみつく。



「いやーっ!」

「きっも」

目の前に落ちてきたクモのおもちゃを、思わず千隼に投げつける。



「こわいこわいこわい!!」

「……」

「ごめん」

後ろの足音から逃げて走り出した先で——
ご機嫌ななめな総長様に、見事な頭突きをかました。



「むりむりむりむり!」

「いてぇって」

せっかく繋いでくれた結翔の手も、思いっきり握り潰してしまう。



「いいリアクション、ありがとうございましたー」

最後はおばけたちに見送られながら、外へ出た。
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