キミに憧れたから

プロローグ

「運命の人」

この世界には、遺伝子相性レベルがほぼ100%の“運命の人”が存在する。

デステニー。

運命の人に出会えるマッチングアプリで、小学生から社会人まで利用されている。

そんな狂った世界で、狂った私は生きている。

運命の番制度なんて、そんなの興味ない。

だって私の人生、生まれてから全部決まってるんだから。

七瀬(ななせ)さん、好きです!付き合ってください!」

安定の告白。

自分の人生イージーモードなんて、顔面偏差値を考えれば分かる。

だって私は、普通の人よりかわいいんだから。

「ごめんね。今は勉強に集中したいから、恋愛とかあんまり考えられないんだ」

私の断り方はいつもこう。

医者の家系に生まれた私は、医者になって後継をしないといけない。

恋人作っていいとか、青春しなさいとか。

そう言うこと言われるたびに思う。

うざい。

そんな私には、憧れてる後輩くんがいる。

「あ…蜂屋(はちや)くんだ」

今日も彼は裏庭で寝ている。

周りから注目を集めながらも、自由で素行もよくない。

天才なんて言われて、先生からもこび売られて。

私と同じなはずなのに、全く違う私とキミ。

彼に憧れてる。

私も彼の様に自分を偽ることなく、“自分らしく”生きてみたい。

こんな私が変わったのは、キミに憧れたから。
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