キミに憧れたから
***


雪那と寮生活が開始してから1週間が経った。

最初は緊張していたものの、最近は一緒にいてとても過ごしやすいと感じ始めた。

もちろんそのことは全て羽那と詠には問い詰められた。

今はやっと2人の興奮も落ち着いて、日常が戻ってきた感じだ。

ただ、気になることが2つあって。

1つはめちゃくちゃ平和なんだけど、寮部屋の奥の部屋が気になるということ。

雪那がどんな部屋か確認してから、「俺達は使わなくていい」なんて言われて近づけずにいる。

もう1つは瑛翔のこと。

あんなに毎日連絡を送ってきていたのに、ここ1週間全く連絡がこないのだ。

きっかけは雪那な気がするが…。

何かやったか、と聞くと。

「別に俺は何もやってませんよ。まあ、父親がうちの社員だったらしいいんで、注意はしてもらいましたが」

あいつはそんなことだけでは、諦めない男だった。

なら、なぜ連絡がこなくなったのか疑問だ。

もうひとつ考えられるとしたら…いや、やめとこう。

これ以上考えても無駄だ。

「ちゃん、初音ちゃん!」

「え、あ…ごめん。ぼーっとしてた」

考えごとをしていたら、詠に呼ばれていたことに気がつかなかった。

というか、なんの話してたっけ。

「もー!!話聞いてました?!」

「ごめん…聞いてなかった」

「初音が詠をいじめてるー」

「違うし!」

とっさに私は否定した。

別に無視してたわけじゃないし、いじめてはないでしょ。

まあ、実際聞いてなかったけど。

「それで何の話だっけ」

「文化祭の話よ。もう来月でしょ?次の授業で出店するものを決めるって」

「ああ〜そんなんだったね」

うちの学校は毎年1〜2万人の来客が来る、有名な文化祭だ。

もちろん生徒達もすごくはりきるイベントだ。

出店は何でもオーケー。

「私は…別に何でもいいかな。羽那と詠は何かあるの?」

「ある!」

「あるわよ」

私の質問に、2人の勢いのいい返事がかぶった。

くすくすと笑いながら2人を見る。

「コホン。えっと、私はコスプレカフェがいいなって思ってます!」

「ええ…それはハードルが高くないかな?」

クラスのみんなも…いや、それは分からないな。

まあ、楽しそうではあるんだけどね。

「羽那は?」

「私は詠に賛成派なのよ。だって楽しそうでしょう?」

「羽那もなんだ」

2人がそうなら、私は別に反対しない。

文化祭何になるか楽しみだな〜。

そんなことを考えているうちに予鈴がなり、次の授業の準備へと移った。

「まさか本当にコスプレカフェになるなんて…」


「やりましたね!!準備が楽しみです!」

授業が終わり疲れ果てている私とは違い、要望通りになった詠と羽那は嬉しそうだ。

コスプレカフェになったはいいけど、なんの衣装かは決められないみたい。

実行委員の方で似合う衣装にしてくれるんだとか。

「…ともかく、要望が通ってよかったね。準備は大変だと思うけど、頑張ろ」

楽しみなのは本当だ。

だからこそ、準備にも気合を入れなきゃいけない。

「よーし!ファイトですよー!!!」

「「お〜!!」」

3人で気合を入れた。
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