百花繚乱
私は椅子に座ると、それを一気に飲み干す。

「ああ、生き返る。」

「そりゃあ、そうだろうよ。こんな暑い日に、のこのこ外を歩いて。もう爺さんなんだから、あんまり無理はしないでおくれ。」

「そうだな……」


そう言って、遠くを見つめる私を見て、女将は言った。

「なんか、あったのかい?爺さん。」

「ん?ああ…」

私はそこで、この店にやってきた理由を、話し始めた。


「女将は、そこの会社の社長を、知っているかい?」

「あの大きな建物のかい?あの会社を知らない人なんて、この町にはいないよ。なんたって、みんなあの会社の、世話になってるんだから。」

女将はそう言うと、私の向かいの席に座った。

「ああ、それでね。そこの社長さんなんだがね。つい先日に、亡くなられたんだよ。」

「ええ!冗談だろう?あそこの社長は、まだ50歳前じゃないか。」

同じ年代の、しかも金持ちの社長が亡くなった事に、女将はひどく驚いているようだった。

< 2 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop