さっちゃんの足跡

11. 体育の時間。

 さあさあみんなで体操服に着替えましょうか。 体育の時間です。
今日はグラウンドでやるそうですけど、、、。
さっちゃんも何とか着替えて同級の女の子と一緒にグラウンドに出てきました。
 「いいかい。 ここにみんなで並ぶんだよ。」
先輩が優しく教えてくれます。 先生たちはみんなが列に並ぶのを待ってます。
 「じゃあ最初はラジオ体操をやろう。 教えるからしっかり覚えるんだよ。」
女の先生がさっちゃんたちに付いてくれました。 「ここは腕をこういう風に回すのよ。」
 文字通りに手取り足取りの指導です。 見えないさっちゃんたちをほったらかしにはできません。
他の子たちも真剣になって覚えようとしてますねえ。 負けられないなあ。
 その頃、ママはというと買い物をしながら馴染みのママに会いました。
でも何か変。 顔を見ただけなのに慌てて何処かへ行ってしまいました。
(何か有ったのかな?) でもそうするのは一人だけじゃなかった。
幼稚園時代にあれだけ仲の良かったママさんたちがみんな敬遠するようになっていた。

 その夜、小学校で事務員をしているママと電話して話したんだけど、、、。
「そういう人はほっときなさい。 その時だけだったのよ。 さっちゃんは別に悪いことをしたわけじゃないんだし、たぶんいつかみんな忘れちゃうわよ。」
「そうなのかなあ?」 「私なんてあなたよりもっと大変なママを見てきたのよ。 生活保護だからって馬鹿にされ続けて自殺した人も居るんだからね。」
「そっか。 そこまではないからまだましなんだ。」 「そうだよ。 あなたが落ち込んでたらさっちゃんが可哀そうじゃない。 元気出しなさい。」
 ママは思った。 負けられないって。
さっちゃんのためにも負けられないって。
 「よし。 じゃあグラウンドを走ろうか。」 先生がそう言ってさっちゃんたちの手を取った。
見えない子たちは弱視の子に引っ張ってもらって走るんです。 最初は大変だけどね。
引っ張られるほうも大変なら引っ張るほうも大変。 どちらも気を使います。
 何周か走って集合場所に戻ってきたさっちゃんは汗だくです。 頑張りすぎたみたい。
教室に戻ったら着替えて一休みしようね。
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