伝えたい想いは歌声と共に
奇跡みたい
大沢さんが、『この子はピュアピュア』の歌の編曲を手伝った。
それを聞いて驚く私に大沢さんはその経緯を話してくれた。
「休み時間に、有馬君が譜面を熱心に見ていたの。練習していた文化祭で弾く曲とは違うし、どうしたのかって聞いてみたら、これをベースで弾けるようにしたいって言ったのよ」
そこまで話したところで、ユウくんは照れくさそうに笑う。
「あの時は、手伝ってくれてありがとな」
もちろんそれは、大沢さんには聞こえない。それでも、言わずにはいられなかったみたい。
そして、私は私で、気になることがあった。
「あ、ありがとうございます。あの、けどそれって、文化祭前だったんですよね。それって凄く大変……って言うか、迷惑だったんじゃ?」
ベースで弾けるように編曲するなんて一言で言っても、簡単なことじゃないよね。
それに、たとえ曲ができたとしても、弾けるようになるには、時間をかけて練習しなきゃならない。
けど文化祭前ってことは、もちろんそれに向けての練習だってしているはず。
「私は、いつもと違うことができて楽しかったわ。それに有馬君も、二倍頑張るから大丈夫だって言ってたわよ」
「それって、二倍頑張らなきゃだめだったってことですよね」
ユウくんがどれだけ練習してたのかは知らないけど、すごく大変だってのは、簡単に想像がついた。
「お前なぁ……」
うぅ……
三島も呆れてるけど、無理ないよね。
「ユ、ユウくん、本当はすごく迷惑だったのかも。それに、『この子はピュアピュア』の編曲頼むのって恥ずかしかったんじゃ……」
『この子はピュアピュア』は、どっちかっていうと、小さい女の子向けのアニメ。
同級生にその編曲を頼むのって、男子中学生としては恥ずかしいんじゃないかな?
当時の自分がいかに考えなしだったかを思い知って、頭を抱える。
だけどそこで、ユウくんが囁いた。
「俺がやりたいからやったんだ。迷惑だと思ってたら、やらなかったよ」
そして大沢さんも、ユウくんの声は聞こえていないはずなのに、まるで引き継いだみたいに言う。
「有馬君がやりたいって言ってたんだから、気にすることは無いわよ。実際、編曲も練習も、凄く楽しそうにしてたし、特に恥ずかしそうにもしてなかったわよ」
それを聞いて、うんうんと頷くユウくん。
そ、そうなの?
でもユウくん優しいから、私のためを思ってそう言ってるだけなんじゃ……
そんなことを思っていたら、そこで大沢さんは、なぜか少し寂しそうな表情を浮かべた。
「実はあの頃の有馬君、少し元気が無いようにも見えたの。笑っていても、どこか無理してるみたいだった」
「えっ……」
静かに告げられた言葉に、思わず声をあげる。
ユウくんに元気がなかったなんて、当時の私は気付きもしなかった。
だけど、今ならその理由もなんとなくわかる。ユウくんの両親が揉めていたのが、ちょうどその頃。
実際は、少し元気が無いなんてもんじゃなかったと思う。
だけど、しんみりした空気になったところで、大沢さんはさらに言葉を続けた。
「だけどね、あなたの事を話している時は違ったの。その間は、本当に心から楽しんでいるように見えた。まあ、全部私の想像なんだけどね」
それを聞いたユウくんは、何も言わなかった。ただ、優しそうに微笑んでいる。
それを見てなんとなく、大沢さんの言う通りなのかもって思った。
「あれからすぐに亡くなったけど、あなたに演奏を聞かせることはできたのね」
「えっと……そ、そうですね」
まさか、演奏を聞かせてくれたのがたった今なんて思わないよね。
もしもそれを話したら、さらに、ユウくんが幽霊になってここにいるって言ったら、いったいどんな顔をするだろう?
幽霊になるってのは、決して良いことじゃない。
三島はそう言ってたし、私だって、幽霊に対してそんなイメージはある。
けど再びユウくんの出会えたのも、こうして演奏を聞けたのも、奇跡みたいに思えた。
それを聞いて驚く私に大沢さんはその経緯を話してくれた。
「休み時間に、有馬君が譜面を熱心に見ていたの。練習していた文化祭で弾く曲とは違うし、どうしたのかって聞いてみたら、これをベースで弾けるようにしたいって言ったのよ」
そこまで話したところで、ユウくんは照れくさそうに笑う。
「あの時は、手伝ってくれてありがとな」
もちろんそれは、大沢さんには聞こえない。それでも、言わずにはいられなかったみたい。
そして、私は私で、気になることがあった。
「あ、ありがとうございます。あの、けどそれって、文化祭前だったんですよね。それって凄く大変……って言うか、迷惑だったんじゃ?」
ベースで弾けるように編曲するなんて一言で言っても、簡単なことじゃないよね。
それに、たとえ曲ができたとしても、弾けるようになるには、時間をかけて練習しなきゃならない。
けど文化祭前ってことは、もちろんそれに向けての練習だってしているはず。
「私は、いつもと違うことができて楽しかったわ。それに有馬君も、二倍頑張るから大丈夫だって言ってたわよ」
「それって、二倍頑張らなきゃだめだったってことですよね」
ユウくんがどれだけ練習してたのかは知らないけど、すごく大変だってのは、簡単に想像がついた。
「お前なぁ……」
うぅ……
三島も呆れてるけど、無理ないよね。
「ユ、ユウくん、本当はすごく迷惑だったのかも。それに、『この子はピュアピュア』の編曲頼むのって恥ずかしかったんじゃ……」
『この子はピュアピュア』は、どっちかっていうと、小さい女の子向けのアニメ。
同級生にその編曲を頼むのって、男子中学生としては恥ずかしいんじゃないかな?
当時の自分がいかに考えなしだったかを思い知って、頭を抱える。
だけどそこで、ユウくんが囁いた。
「俺がやりたいからやったんだ。迷惑だと思ってたら、やらなかったよ」
そして大沢さんも、ユウくんの声は聞こえていないはずなのに、まるで引き継いだみたいに言う。
「有馬君がやりたいって言ってたんだから、気にすることは無いわよ。実際、編曲も練習も、凄く楽しそうにしてたし、特に恥ずかしそうにもしてなかったわよ」
それを聞いて、うんうんと頷くユウくん。
そ、そうなの?
でもユウくん優しいから、私のためを思ってそう言ってるだけなんじゃ……
そんなことを思っていたら、そこで大沢さんは、なぜか少し寂しそうな表情を浮かべた。
「実はあの頃の有馬君、少し元気が無いようにも見えたの。笑っていても、どこか無理してるみたいだった」
「えっ……」
静かに告げられた言葉に、思わず声をあげる。
ユウくんに元気がなかったなんて、当時の私は気付きもしなかった。
だけど、今ならその理由もなんとなくわかる。ユウくんの両親が揉めていたのが、ちょうどその頃。
実際は、少し元気が無いなんてもんじゃなかったと思う。
だけど、しんみりした空気になったところで、大沢さんはさらに言葉を続けた。
「だけどね、あなたの事を話している時は違ったの。その間は、本当に心から楽しんでいるように見えた。まあ、全部私の想像なんだけどね」
それを聞いたユウくんは、何も言わなかった。ただ、優しそうに微笑んでいる。
それを見てなんとなく、大沢さんの言う通りなのかもって思った。
「あれからすぐに亡くなったけど、あなたに演奏を聞かせることはできたのね」
「えっと……そ、そうですね」
まさか、演奏を聞かせてくれたのがたった今なんて思わないよね。
もしもそれを話したら、さらに、ユウくんが幽霊になってここにいるって言ったら、いったいどんな顔をするだろう?
幽霊になるってのは、決して良いことじゃない。
三島はそう言ってたし、私だって、幽霊に対してそんなイメージはある。
けど再びユウくんの出会えたのも、こうして演奏を聞けたのも、奇跡みたいに思えた。