御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
神楽木ホールディングスに到着すると、受付を通されて向かったのは、ガラス張りの端正な部長室だった。

──さすが、一流企業。

同じ広告業界でも、ウチみたいな雑居ビルの片隅とは格が違う。

部長クラスに一室与えるなんて、余裕のある会社は違うな……と、そんなことを思っていた。

「よくぞ、おいでくださいました。」

その声に、心臓がドキンと跳ねた。

立ち上がって私を迎えたのは、長身で整った顔立ちの男性。

ネイビーのスーツがよく似合っていて、まるで雑誌のモデルのようだった。

「初めまして。路加(ルカ)広告の朝倉と申します。」

思わず名刺を差し出す手に力が入る。彼が名刺を受け取ると、軽く一礼してから、柔らかな声で名乗った。

「神楽木律と申します。部長をしております。どうぞ、よろしくお願いします。」

──え?

その名前に、私は一瞬思考が止まった。

「神楽木」……って、まさか……。

神楽木ホールディングスの“神楽木”!?

つまりこの人は──あの大企業の御曹司!?

顔に出さないように必死に平静を装いながらも、胸の奥がざわついた。
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