八咫烏ファイル

【夜探偵事務所】
カチャリと事務所のドアが開く
電話を終えた夜が中へと入ってきた
その横顔はすでにいつもの無表情な彼女に戻っていた
「あれ?もういいんですか?」
ソファから立ち上がった健太が心配そうに声をかける
「あぁ。急な電話だっただけだ」
夜は短くそう言うと自分のデスクへと向かう
そしてギシリと音を立てる椅子に深く体を預ける
一本のタバコに火をつけた
「田上健太」
「はい」
健太は背筋を伸ばして夜の言葉を待つ
「この間の霧島の件で今月の収支は楽になった」
夜は天井に細く煙を吐き出しながら言った
「だから明日から二日休みにしよう」
「えっ!ほんとですか!」
健太の顔がぱあっと明るくなる
「……やけに嬉しそうね?」
夜が面白くなさそうに健太を睨んだ
「いえ!あのプライベートも重要じゃないですか!」
健太は慌てて言い訳をする
「ふーん」
夜は腕を組むと意地悪く笑った
「プライベートが充実しすぎてまた悪霊に取り憑かれるなよ?」
「……っ」
健太は言葉に詰まる
その分かりやすい反応を見て夜はたまらず吹き出した
「プッ……はははっ!」
それは健太が初めて聞く彼女の心からの大笑いだった
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