昨日の友は、今日の旦那様
 もう、何度も遊びに来たケンジの部屋。
 しかし、ここに泊まるのは、長い付き合いで今夜が初めてだ。
「大丈夫?」
 乱れた髪を優しく撫でられ、少しぎこちなく微笑みを交わす。
 
 あんな形でプロポーズされて、普通はOKしないだろう。
 それなのに、私たちは勢い任せで閉庁時刻ギリギリの役所に向かい、婚姻届を提出してしまったのだ。
 代行サービスで、証人のサインも既に済ませた婚姻届を、ケンジは予め用意していたのだから、呆れるやら、驚くやら。
「指輪より先に婚姻届を用意してたなんて、よく考えるとおかしな話だよな⋯⋯本当にごめん」
「ふふ⋯⋯ケンジらしいと思うけど」
 ケンジは、私の左手の薬指に触れながら、
「明日にでも、一緒に指輪を見に行こう」
 そう言ってくれた。
「それにしても、どうやって周りに結婚の報告したらいいものかしら⋯⋯頭がおかしくなったと思われそう」
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