皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
そう言って、王妃様はふっと視線を遠くに向けた。その視線の先に、誰かが駆けてくる。

「アレシオ殿下!」

私は思わず立ち上がった。どうしよう。

髪は風に乱れているし、目元も泣いた後で腫れているかもしれない。

こんな姿、見せたくない──でも、逃げ場なんてどこにもなかった。

やがて、はぁはぁと息を切らせながら、アレシオ殿下が庭園の小道に駆けつけて来た。

軍服の前ボタンも乱れ、汗が額に光っている。

「アレシオ、私がセラフィーヌと話したくて、呼んだのよ。」

王妃様はベンチから立ち、二人を残して微笑んだ。

「すみません……少しだけ……話をさせてください。」

アレシオ殿下の声は掠れていた。私の前に立つと、その金の瞳がまっすぐ私を射抜いた。

「セラフィーヌ……君に、伝えなければいけないことがある。」

風が、二人の間をすり抜ける。

「君と離れて……やっと気づいた。どれだけ俺が、君を必要としていたか。」

「アレシオ……」
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