売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
静かに、揺るぎなく。クライブはそう言い切った。

誰も反論できなかった。値は正当に上回っている。

しかも、それを払う相手は、名門中の名門・オーセント家の後継者。

「そう言って……女を野放しにする気だろう?」

嫌味のように吐き捨てた声がした。

──え……?

“野放し”──それはつまり、“自由にする”ということ?

私は息をのんだ。

この人……お金を払って、私を……“解放”しようとしてる……?

そんな馬鹿な、と思った。

だって今まで、誰にも助けてもらえなかった。

叔父でさえ、私を金に変えたというのに。

でも──クライブという男の瞳は、静かで、どこか冷たく見えるのに、

私を“物”ではなく、“人間”として見ていた。

その瞳の奥に、私は一瞬だけ“光”を見た。

ほんのわずかでも、それが救いだと感じてしまったのは、この地獄のような時間が長すぎたせいだろうか。

心が、かすかに、震えていた。
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