蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
「君は誰かの理想の妃である必要はない。ただ、君が君としてこの国を想い、歩いている限り、誰も君を否定することはできない」
その真っ直ぐな言葉に、セレナの胸が震える。
「でも、間違えたらどうしようって思ってしまうの。小さな判断が、大きな痛みに繋がるかもしれないって……」
アグレイスは、静かに彼女を抱きしめた。
「間違えることを恐れないで。迷ったら、僕が一緒に考える。君はひとりじゃないんだ」
セレナの頬に、ぽたりと涙がこぼれる。
(私はいつの間にか、またひとりで背負おうとしていた……)
「ありがとう、アグレイス。あなたの言葉で、また少しだけ前に進める気がする」
その夜、セレナは改めて帳簿を開いた。
でも今度は違った。
一つひとつの数字や報告に、命や暮らしの重みを想像しながら、丁寧に目を通していく。
「私はまだ未熟。でも、だからこそ見えるものもあるはず……」
胸の奥に、小さな炎のような希望が灯っていた。