合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない
 強引な話の展開についていけない。いったい彼はどうしてしまったんだろう。

「鈴菜、俺は人生において、なにより仕事を優先したいと考えている」

 今度は思わぬ方向に話が飛んだ。ポカンとする鈴菜に悠磨は説明を始めた。

 葛西教授の話通り、悠磨は非常にモテてきた。病院では看護師や事務員の女性たちから色目を使われたり誘われたり、酷いときは待ち伏せされたこともあり、仕事に支障をきたすレベルだった。

 しかし結婚すると公表したところ、彼女たちからのアプローチは一気に減ったらしい。

「そう考えると、この結婚は俺的にもメリットがあった」

「モテすぎるのも大変ですね。でも、今のお話なら減って良かった、で終わりじゃないですか」

「今日葛西教授に『新婚早々別居なんて普通はありえない』と言われて気づいたんだが、病院には結婚したら事務に家族が増えた届を出す必要がある。出さないでいるとすぐに噂が流れて、また付け込む隙ができたと思われる――それに」

 一度言葉を切った悠磨は、じっとこちらを見た。

「こんな幸せな結婚式をした夫婦が、別居したまま離婚するのはおかしい」

 彼の言葉に鈴菜の胸がトクンと跳ねた。
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