神様はもういない
 神様がいるとしたら、たぶん私は八百万の神に見放されているのだと思う。 
 中学時代、三年間のすべての時間をかけて頑張った吹奏楽部の最後の夏に、予選で敗退した。
 高校時代、二年間片想いをして卒業の日にようやく告白したひとは同性愛者だった。
 社会人になったいま。
 半年前に、婚約者が雷に打たれて死んだ。
 
「神様なんて信じない」

 いつからか口癖になってしまった。
 神様はきっと、私以外の誰かを幸せにする。私は神様に、とことん嫌われているようだ。
 だから、大切なひとを失ったとき、思った。

 神様のばーか!
 大ばかやろう!!
 彼を返せこのヤロー!!!

 とんでもない罰当たり娘である。
 でも、そう心の中で叫びでもしないとやっていられなかった。
 だって……だってさ。
 私のなかの神様だったんだよ。
 あのひとは——彼は。私の大切なひとは。
 私には、神様みたいに輝いて見えたんだ。
 なのに、あっけなく死んじゃうなんて、ひどいよ。
 神様はもういない。
 私はこの先、どうやってひとりで生きていけばいいの……?
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